ここからは本題です。
訪問介護事業者と一口に言っても、大きく2種類ある
一つは、利用者宅を1軒1軒訪問して、ヘルパーが介護サービスを提供するもの。もう一つは、同じ建物や同一敷地内にまとまって居住する利用者宅を訪問し、サービス提供するもの。
前者の場合、端的に言えば、1軒1軒移動しながら、介護サービスを提供するため、移動交通費の発生はもちろん、最適な移動ルート確保の手間等が存在します。もし、訪問場所が点在していた場合は、非常に移動コストが高くなってしまうという特徴があります。
後者の場合は、利用者居住地と訪問介護事業所の場所が同一の建物(例:1Fが訪問介護事業所で、2F以上が利用者の居宅等)であったり、双方が非常に近い同一の敷地内に存在していたり等、前者に比べて移動コストが低いという特徴があります。
どちらが運営上、楽かと言えば、当然、後者です。前者が自転車や車で1軒1軒移動するのに対し、後者は移動がほとんどないためです。
今回の訪問介護報酬減額改定は、その考慮が綿密に払われた気がしないまま、「訪問介護事業所は儲かっている」と前者も後者もいっしょくたにされ、全体の報酬減額に至ったと考えられます。
下記は前者と後者の収支比率厚生労働省自身が公開している資料です。
これは、収入と支出との比率を示した、収支比率ですが、これを見ると、同一建物訪問介護事業者の収支比率は9.9%、一方個宅訪問の事業者は6.7%と実に、3.2%以上の開きがあります。
たった、3%と思われるかもしれませんが、これは規模の多寡によっては、大きな収入の差と言えます。さらには、回答数でも示された通り、多くの事業者(987)は同一建物事業者(314)ではなく、個宅訪問事業者であり、決して潤沢に儲かっているとも言い切れないと感じます。
しかし、全体の訪問介護事業所としては、約8%の収支比率となり、「そこそこ儲かっている」と判断され、今回の減算根拠にされたと考えられます。
ちなみに、同一建物訪問介護事業者には、さすがに個宅訪問介護事業所と比べれば移動の手間が少ないので、既に「同一建物減算算定」というものが存在しますが、それでも、まだまだ、個宅訪問介護事業者との「収支比率の差」は埋まっていません。
そこで、今回は、同一建物減算算定はさらに強化されました。私は、それはやむを得ないと考えます。しかし、極度の人手不足に陥っていて、決して収支比率が良好とは言い切れない、個宅訪問介護事業所については、減算の必要があったのか、はなはだ疑問です。
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